北海道遠征の前に

昨年の夏から、今年の3月にかけて、全3巻の『北海道の蝶の採集・撮影案内』(写真1)が発行されました。明日から、この本に紹介されているオオゴマシジミやカバイロシジミの産地へ出かけます。飼育中の幼虫達が餓死しないようにしておきます。オオムラサキは昨日までに袋掛けに移行しました。チャマダラセセリは室温飼育の分は羽化済み、18℃飼育の分は蛹化中。問題はウラナミジャノメ。母蝶採卵して35日目で、野外飼育の幼虫は20mmほど(写真2)、18℃飼育の幼虫はまだ12,3mmです。野外飼育分にはササガヤの鉢を追加し、18℃飼育の分は小分けして、食草を補給しました。

北海道採集撮影案内 ウラナミジャノメ野外飼育幼虫

新穂高 2019-3

夏の新穂高、行ってきました。今年はタカネキマダラセセリは裏年で、昨年に比べて、目撃できた個体数は明らかに少数。毎年、不思議に思うのですが、生態図鑑では2,3齢と5齢で2回冬越しをして、3年目に羽化するとなっています。2010年くらいから毎年タカネキマダラを見ていますが、発生数はやはり西暦偶数年が多く、奇数年は少ない。どういうこと? 急斜面の草付きは雪解けが早いので、右俣のタカネキマダラは大多数が2年目に成虫になるのかも知れません。今回もお天気最重視で出かけたので、時折ガスで日が陰りましたが、日照は十分。好条件でしたが、タカネキマダラは少ない。何故かクモマベニヒカゲも少ない。発生が遅れて、出始めなのかも知れません。綺麗な雄が数頭。少ないと生きた個体の写真が撮れません、採っちゃうからですが。代わりに新穂高 2で採集した個体の展翅品を載せます。1週間ぶりに晴れたと思って出かけても、自然の1週間は着実に進んでいて、クモマの色は黄から紅に代わって、クモマツマキは雌も姿を見せませんでした。

タカネキマダラセセリとクモマベニヒカゲ タカネキマダラセセリ展翅

 

ゼフィルスの母蝶採卵

ウラジロミドリシジミの母蝶4頭が昇天されました。6月23日に採集して23日生存の間に200卵以上をカシワやナラガシワの枝に産みました。長く生きて頑張って産んでくれた例です。お嫁入り先もたくさんあって、順調です。8卵の卵塊から1卵ずつまで、産卵数はいろいろ。また産卵位置も径1.5cmくらいの枝のしわや枝の分岐部(写真1)、枝と葉の隙間、鱗片の陰など様々でした。 今年母蝶採卵を試してみた他の種は 1) ミドリシジミ: 約2週間生存したものの2雌で1卵。細い枝ではだめなのかな。 2) カシワアカシジミ: 2雌で産まず。(この何年かで袋掛けや大きな容器、小さな容器、いろいろ試していますが、コツがつかめずにいます。) 3) ウラミスジシジミ: 2雌で進行中。ナラ類の芽が大きくならないとダメかと思いましたが、3卵塊産卵しました。コナラの小枝分岐部(写真2)とミズナラの小さな芽周囲です。ウラミスジの卵は突起がたくさんあり、携帯用マクロで写しました。 秋にはヒサマツミドリの母蝶採集に行こうかと考えていますが、母蝶からの採卵は、まだまだ出たとこ勝負感が強く、丁寧にできていません。

ウラジロミドリシジミ卵 ウラジスジシジミ卵

クモマツマキチョウの飼育には

越佐昆虫同好会の大橋さんが、長年(40年)のクモマツマキチョウ飼育経験を纏められた本を発行されました。「クモマツマキチョウ飼育の覚書」(写真は表表紙と裏表紙)です。表紙のクモマツマキは、これから翅をのばす20世代目の成虫。クモマツマキの交配から始まっているのが、名人らしいところです。採集や採卵からではありません、まず交配から始まっていて、紙製の補助具を使ったハンドペアリング法が紹介されています。このおかげで、私もユキワリツマキの卵をいただくことができました。採卵用の鉢も独自に工夫されたものです。母蝶からの採卵にも参考になります。夏期に幼虫飼育すると死亡率が高いのですが、瓶差し飼育の方法もユニークです。7月20日発行のでき立てです。早めに入手されたい方は、越佐昆虫同好会の事務局(〒940-0225 長岡市仲子町12番29号 邉見 行雄 方 henmi1123@yahoo.co.jp )へご連絡ください。

クモマツマキチョウ飼育本 クモツキ飼育本裏表紙

オオムラサキの飼育 2

オオムラサキの幼虫が2齢になり始めました。小さいながら鹿のような立派な角がついています。ブルーの純系は少し弱いと聞いていましたが、初齢で食いが悪いまま死亡した個体がいました。全部が2齢になるまで、写真のように弁当箱型の容器で飼育する予定です。

オオムラサキ飼育容器 オオムラサキ2齢

クロセセリ羽化

高知県産のクロセセリが羽化しました。1蛹しかなかったのですが、無事に羽化。野外で日陰に止まっているところを撮影しようとすると、すぐに翔んで行ってしまいますが、飼育品を冷蔵庫から出すと、そろそろと翅をひろげました。やっぱりクロセセリだけあって、白く抜けたところ以外は黒一色。

クロセセリ

新穂高 2019-2

少し早いかなと思いましたが、この先1週間、梅雨明けは望めず、梅雨の合間というか、梅雨の隙をついて17日新穂高へ行ってきました。幸い午前中は晴れ間が出て、お目当てのタカネキマダラセセリがビューンと翔んてきました。午前も午後も風が強かったためか、翔んできてもテリトリーを主張することなく、すぐに翔び去ります。 ということで生写真は撮れず。日が射して良い時間帯は9時から11時くらいまでの短い時間でしたが、曇天も覚悟していたので、お天気に恵まれた感がひとしおでした。理由は斜面で待っている時に、下からオレンジが上がってきたこと。草付きに沿って、こちらへ向かってきたので、余裕をもって捕獲できました。この前空振りだったクモマツマキチョウ。谷沿いに残雪が多かったので、少し期待はありましたが、タカネキマダラと同じ場所でクモツキが棚ボタで採れました。3時間歩いても、これだからやめられません。注意は払っていましたがクモマベニヒカゲは見られず、クモマツマキの鮮度からしても、今年は少し発生が遅れているようです。オニシモツケの葉上には、コヒョウモンの幼虫がまだいました。

タカネキマダラセセリとクモマツマキチョウ コヒョウモン幼虫

チャマダラセセリ羽化

蛹期10日で、チャマダラセセリが羽化しました。野外では見られない北海道産の夏型です。チャマの飼育は初めてだったので、羽化したての夏型を見るのも初です。前翅の付け根に春型と同じように褐色の鱗粉が乗っているのが、粋です。新鮮なので、濃茶と白のコントラストも鮮やか。

チャマダラセセリ夏型

オオムラサキの飼育 1

昆虫採集大会の幹事をしておられるTさんから、オオムラサキの卵をいただきました。出所は滋賀の長﨑さん、山本さんたちが累代されているブルーオオムラサキ。了承いただいて孫請けしています。飼育は既に何代も累代されていて、ブルーのスギタニ型に関する論文も発表されています(F.Nagasaki, T.Yamamoto et.al, 蝶と蛾 65(1): 5-16, 2014)。冬場に幼虫採集をして飼育することはよくありますが、卵からは初めてです。すでに卵は黒く色づいていて、孵化した幼虫も出てきました。まずは越冬幼虫までゆっくり育てます。

オオムラサキ卵 オオムラサキ初齢幼虫