指定種の移管 3 ゴマシジミ関東・中部亜種

ゴマシジミも少なくなっている蝶です。北海道や東北の一部ではまだたくさんいるとも聞きますが、関東・中部に限らず、西の方、九州・中国地方でも数が少なくなりました。ゴマシジミは保護するといわれても、幼虫を育ててくれるアリさんがいないと生息できないので、生息域での河川堤防、農地斜面等にある草地の工事を禁止しないと、ほんとは意味がありません。草原が残っていてもススキのように丈の高い草が密になると、なんとなくわかると思いますが、アリの巣が埋もれてしまい、ゴマシジミもいなくなります。草刈りがされて、草原環境が維持されるような場所が過去にはたくさんありました。山裾の草原が消え、農地も変わり、河畔はコンクリートで護岸工事がされて、ゴマはいなくなりました。別荘地ブームやスキーリゾート開発は消滅したので、どこかで少しずつ増えていることを願うばかりです。種の保存法で指定した種の消長について、環境省は検証して欲しいです。

     長野県松本市奈川産 ゴマシジミ
     木曽地方~下伊那産 ゴマシジミ
     山梨県富士吉田市産 ゴマシジミ

新年会

即売会後の新年会、夕方出直して堂島まで行きました。本社勤務の時に通い慣れた地下道です。コロナ禍を耐え抜いた店は残っていましたが、かなり入れ替わりました。まだ残っているがんこな店で開催です。即売会に現れた怪しげなバイヤーの話や今昔蝶界情報を聞きながら、ハイペースで緑茶ハイを飲みました。お酒の善し悪しはあまりわからないので、一応健康に良さそうなものを飲んでいます。宴たけなわになって、はずれ無し抽選会。やりました。一番欲しかった秋田県にかほ市産のギフチョウ(写真2)、が当たりました。私の提供した3点が束になっても届かない。提供者のMさん、ありがとーー。また徘徊先で会いましょう。

第30回昆虫即売会

タケパラ主催の昆虫展示即売会に行ってきました。盛況です。一番手前は水沼さんの広いブースなので、内側にはお客さんはいません。出入りしている常連さんは結構いますが。ぐるっと回って、うーん、良い蝶や格安ものもあるのですが、標本は買いませんでした。物欲は着々と失せています。採集に行きたい気持ちは変わらないのですが。

指定種の移管 2 アサマシジミ北海道亜種

アサマシジミは雄翅表の色合いが多様で、といっても皆ブルーなのですが、別種扱いされたり、いろいろな呼び名がついたりした人気の高い蝶です。北海道亜種はかつてイシダシジミと呼ばれ、明るいブルーの綺麗な蝶です、採集禁止でなければ毎年でも行きたい蝶です。イシダ以外にも、ヤリガタケ、トガクシ、ミョウコウ、ハクサンなど産地ごとに魅力的な呼び名がついていて、アサマブームもあったように思います。イシダシジミを実際に採集できたのは1975年、1シーズンだけ。院生のFさんと1回生のI君と3人での北海道遠征でした。7/13,16;北愛国、7/20;上春別、7/21;西春別、7/23;忠類で、満足のいく採集ができました。ほとんどが旧国鉄線路沿いの草付きでの採集でした。当時の様子はSpinda Classics Vol.1のSPINDAR 7に記されています。なにせ、コピー機も普及していない時代なので、携帯のカメラもなく、生態写真はありません。残念だなぁ、、イシダをたくさん採った前年にも、上春別で線路脇のシロツメクサの花をぴょんぴょん翔びまわるカラフトタカネキマダラセセリを次から次と取り込んでいたのに。学生最後の年で、1976年春からは就職し、しばらく遠征ができませんでした。ということで、アサマシジミ北海道亜種は標本写真だけです。鉛筆で手書きのラベルが付いています。おまけで各地のアサマシジミ。

   アサマシジミ北海道亜種(左列♂,右列♀)
  (上段;シロウマシジミ,下段;ハクサンシジミ)
   小谷村産アサマシジミ ♂ の色彩変異

指定種の移管 1 カシワアカシジミ

種の保存法で指定された蝶。譲渡が簡単にはできないので、箕面昆虫館で保管してもらえるよう、Wさんを通してお願いしていました。書類の提出が終わり、後は許可待ちです。手元からなくなってしまう前にお別れをしておこうかと。どの種も、指定されてからは採集にも行けず、飼育もできず、せっかく新ポイントを見つけたのにもう行けず、残念です。それぞれの種に思い入れがあるので、長くなります。

まずカシワアカシジミ冠高原亜種。北海道のカシワアカシジミ(キタアカシジミ)は、1953年には本州のアカシジミ(Japoinca lutea)と違うJaponicaがいることが指摘されていました。蝶研サロン1987や北海道昆虫同好会の連絡誌で情報が発信され、1990年、猪又氏の原色蝶類検索図鑑で正式に種としてキタアカシジミ(Japoinca onoi Murayama, 1953)が採用されました。1992年の蝶研フィールドで広島県にもキタアカシジミ(Japoinca onoi ssp. mizobei Saigusa, 1993)がいると知り、ん? “北” アカじゃないじゃんと思いながら、冠高原で実際に採集したのは、2003年でした。最初の印象は、でかい、雌のお腹がパンパン。それから6月末、行けるときは冠高原へ出向きました。追加の印象は飛翔力が強い。成虫はカシワに執着するので、冠高原では大樹の梢で見ることが多いのですが、一旦、樹を離れると延々と翔びます。斜面では諦めますが、一度農地を横切って翔び出したので、200mほど追いかけたことがあります。赤いので見失いませんが、逃げられました。2020年、指定種になるまで、何度か母蝶採集して採卵・飼育を試みましたが、採卵成功率は50%。基本横に張り出した枝を設定してやれば良いのですが、産まないときは全然ダメでした。以下、卵から成虫までの記録です。

     採卵用ケージ
     カシワアカシジミ 卵塊
     カシワアカシジミ 卵
     カシワアカシジミ 2齢幼虫
     カシワアカシジミ 3齢幼虫と食痕
     カシワアカシジミ 3齢幼虫と吐糸造巣
     カシワアカシジミ 終齢幼虫
     カシワアカシジミ 蛹
     早朝下草に降りたカシワアカシジミ ♀

参考文献

白水隆,2006.日本産蝶類標準図鑑.学習研究社 98 東京

キタアカシジミ特集号 1991. 蝶研フィールド 6(4) : 1-32 蝶研出版

神垣健司・横倉明,1993.広島県のキタアカシジミⅡ 蝶研フィールド 8(8) : 6-13.

ホシミスジの幼虫

庭のコデマリに住み着いているホシミスジ。近所にユキヤナギの垣根や植木が点々とあるので、この一帯で発生しています。庭に越冬巣がないか探すとすぐに見つかりました。たいていは低い所の枝に袋状の巣を作っています。今年は1ヵ所に固まって3つ付いていました。上の方の枝には蛹の抜け殻がまだ付いていました。

クロツバメシジミの幼虫

冬の定番、蚊帳の中のプランターでクロツバメシジミの幼虫の状態をチェックしました。昨秋、翔んでいた個体数が例年より少なめだったので、幼虫も少ないはず。タイトゴメが食べられて葉皮が白っぽく残った食痕を目当てに探します。まだタイトゴメの葉と同じくらいの大きさの幼虫が見つかりました(写真1)。ツルマンネングサの芽の真ん中に潜っている幼虫もいます(写真2)。食痕の割に幼虫が見つかりませんでした。まだ小さくて葉の中にいると思われます。一つだけ、終齢幼虫を見つけました(写真3)。

永源寺の赤上がりギフ

オークションでギフチョウの蛹、ちょっと特殊な遺伝型、を入手しました。既に絶滅していると言われる滋賀県永源寺のギフチョウ。多翅脈+赤上がり遺伝形質のギフチョウです(写真)。クジャクギフと同じように後翅の翅脈が多く、翅脈で分割された赤紋が増えて上方に伸びています。クジャクギフは赤紋は増えませんが、青紋とオレンジの紋が増えて縁取りが鮮やかになります。今回入手したのは蛹なので、翅がうまく伸びるかわかりませんが、春を楽しみに冷蔵庫に保管しました。

やどりが 279号

2023年最後のやどりがが届きました。報文は珍しく蝶の記事ばかりです。ナガサキアゲハ、シロオビヒメヒカゲ、ゴマダラチョウとアカボシゴマダラ、オオムラサキ。シロオビヒメは北海道へ行けたら、今年は飼育してみようと考えていたので、参考になります。できれば三国峠で前翅の白帯が広ーい母蝶を採りたいです。また3月にアカボシゴマダラの幼虫または蛹を採集してみようと目論んでいるので、これも参考になります。アカボシは49年前の3月、幼虫採集をしたことがあります。芦花部で、まだ葉が展開していないリュウキュウエノキの芽を4cmくらいに成長した幼虫が食べていました。芽が点々とついている枝に、芽の数倍の大きさの太い幼虫がついているので、樹の下から眺めても、幼虫の姿がわかりました。イワカワシジミの蛹も採れました。その頃は実から離れて蛹化するという考えはなかったので、枯れてぶら下がったクチナシの実を必死で探して、時々ハブを気にしながら、持ち帰った記憶があります。